
人の自然な姿って何だろう? 例えば植物のように、陽差しへ向かって、その人のやり方や速さで育っていくことなのかなと仮定して。この企画では、そんな風に自身の歩みを進めているように見える方々に、日々の活動についてお話を伺い、自然な道を歩むためのヒントや魅力について探ってみたい。
第一回は、セレクト服やヴィンテージ服の販売を行うスタイルブランド「OWN」を運営するeimiさん。OWNのオンラインストアやポップアップストアには、ユニークな形の服や色鮮やかな小物が並びます。「誰かではなく、あなた自身を生きる」というコンセプトのもと活動する彼女に、これまでの道のりや、大切にしていることについて伺いました。
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自分の心に正直になれてない時に感じた虚しさ
「小さい頃から文章も絵も好きで、やりたいことが湧き上がる感覚があったんですよね。高校生くらいからは、特に服が強烈に好きで、思うままに服を作ってみたいという気持ちがありました。服を通じて、価値観や世界観を作ってみたいなと。」
10代の頃から表現することが好きだったというeimiさん。しかし、服や表現の活動では食べていけないと感じて、大学卒業後はIT系の会社に就職しました。
「仕事では調整役が多かったんですよ。いろんな人の意見を聞いてまとめるような。ある時、社外のクリエイティブパートナーから『あなた自身は何がやりたいの?』と聞かれて、自分のやりたいことがわからなくなっていることに気づいて。自分の中にあった夢や理想が無くなってしまう、と危機感を持ちました。以前はすらすら描いていた服のデザイン画も、いつの間にか描けなくなっていて。やりたい気持ちを押し殺すとやばい、発想の起点を変えなきゃと思いました。」

仕事で取り組んでいた動画メディア事業にも、違和感を感じていた。
「当時作っていた動画は、トレンドのファッションや、人から評価されるためのヘアメイク等のハウツーコンテンツが主でした。ニーズもあり、その頃は再生数も伸びていきました。けれど、自分はそれを心からやりたいわけじゃ無いと気付いた時に虚しさがあって。人から評価されるのは、自信を持てるとかのメリットもあると思うけど、自分の人生でやりたいことの解決にはならない。世の中を見ても、みんなそれでいいんだっけ?と感じていました。」
このままではいけないと、仕事をしながら服作りを再開するようになりますが、活動として形にならない日々が続いていたといいます。30代になり、このままやりたいことから遠ざかってしまうと焦りも出てきた時、これからどうして行こうか、自分の価値観をノートに書き出していったそうです。
人との対話で磨かれていったブランドコンセプト
「流行りとか、誰かに評価されるためにとかは、もういいなと思っていました。商業施設に流行りの服ばかり並んでいるのもつまらないと感じていたし、友達と話す中で、そういう感覚を持つ人は、私以外にもいるという確信もありました。」

「それで、『MAYME』というコンセプトが浮かびました。“MAY ME わたしかも?っていう服とスタイルを売る”。当初考えていたブランドコンセプトです。」

コンセプトについて考えを巡らせていた頃、サスティナブルなファッションブランドを運営する知人と話をする機会があったそう。彼女と話したことで、視野が広がっていきます。
「話してみて感じたのは、彼女は自分のやりたいことを本業にして、本気でやっているということでした。自分とは覚悟が違った。今思うと、わたしはやりたいことに対して腹をくくれてなかったと思います。」

「その方は、事故のあったバングラディッシュの工場* で作られた服を着るのは絶対に嫌だという気持ちを持ってる人でした。彼女の話を聞いて、MAYMEで考えていた『なりたい自分になれるかも』という自己実現のためだけのブランドだと、考えが小さすぎたなと気付かされました。着る人にとっても私にとっても、自己満になるなと。」
*注)2013年、バングラディッシュにて、縫製工場が入った商業ビル「ラナ・プラザ」が崩落。1,000人以上が死亡、2,500人以上が負傷し、劣悪な環境や低賃金で働かせるアパレル企業の社会的責任が問われた。

本を読んだことも、ブランドの在り方を考えるきっかけに。
MUJIのプロダクトデザイナーとして働く知人と話をする機会もあった。
「彼からは『衣類にとって、何が本当にサスティナブルなんでしょう?』というような質問をされました。衣類を循環させるより、焼却する方がエコな場合もあると。リサイクルするにもエネルギーが必要だから、寿命を長くする=長く着ることもサスティナブルになるということを教わりました。」
長く着ることは、「自分の根本的な価値観に触れるものだからこそ長く着られる」ということにも繋がる。対話を通して、ブランドのキーポイントが見えてきた。
一歩踏み出すことで、次へと広がっていく
自分の価値観を理解することや、人と話すことを通して、「Live your OWN life 誰かではなく、あなた自身を生きる」というコンセプトにたどり着いたeimiさん。

世界的に服が作られすぎているという状況を踏まえ、新しく作るのではなく、ヴィンテージ服で価値観を表現し販売することから始めることに。方針が定まると、オンラインショップを立ち上げ、SNSで発信し、国内外での買い付けやポップアップストアでの販売等、多岐にわたる活動が始まりました。ブランドの魅力を開かせたり伝えたりするために意識していることについても伺いました。
「情報を厚くしたいと思っています。その服がどこから来たのか、何がいいと思ってセレクトしたのか。買い付けの時もそういう話を聞くのが面白いと感じるので、一着一着の説明は丁寧に書いています。ポップアップの時には手書きで。書くのに時間がかかって痺れました(笑)」

「本質から外れないように、ということも気をつけています。なぜOWNをやるんだっけ?という軸と、実際にやることはリンクしてないといけない。例えば、『売れそう』という目線だけにならないこととか。売れそうだなーという服に出会うと惑わされるけど(笑)、それを私の活動でやる意味はあるんだっけ?ということは心に留めるようにしています。焦らない。」
普段、商品写真は自身で撮影していますが、コンセプトを表現したい時などはフォトグラファーやモデルに依頼して撮影することもあるそうです。

「ビジュアル撮影は趣味としてもやりたかったし、最低限やるべきものと感じています。ビジュアルにした方が本気度も伝えられるかなと。モデルやフォトグラファー、ヘアメイクさんに依頼したり、スタジオを借りたり、お金もある程度かかることなので、自分もそれで覚悟を決める感覚でした。」

活動を続ける原動力については、こう語ります。
「やれば変わるという実感があるから、続けようと思えます。DMで『いい取り組みですね』と声をかけてくれる人がいたり、ポップアップを行った時にはInstagramをフォローしてくれた方が直接いらしてくれたり。やればやるだけ手応えがある。購入してくれた方からお礼のメールをいただいたこともあり、励みになります。怖い人ばかりじゃないんだ、って(笑)。何にでも言えることだと思うけど、踏み出してみると、次に広がっていくような感覚があります。InstagramやnoteなどのSNSでは、コンテンツが残るので、それも続けようと思える理由です。後からも見てもらえる。見てくれる人がじわじわ広がっているなと、アクセス数を見ても思います。」
仕事をしながら、無理のないペースで
本業の仕事も続けながら、OWNの運営に取り組んでいるeimiさん。どのようにバランスを取っているのでしょうか。
「今は9:1くらいで仕事に時間を使っています。本当はOWNの時間をもっと増やしたいけど、平日はきつい…。とりあえずビール飲もってなります(笑)。仕事はこれまでの経験も生かせるし、しばらくはしっかりやろうと思っています。本業でやっていることも面白いので。
OWNは、無理せず続けられるペースでやろうと思っています。とはいえ、眠い中、気合いでやってる時も多いですが(笑)。 『道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である』という言葉を聞いた時があって、ぐさっと来ました。OWNは、今はまだ支出が多い状況だけど、1年以内くらいに収支のバランスも取れるようになりたいと思っています。」

大変なことについても話してくれました。
「インスタの投稿やWebの更新作業が大変です。特に着画を撮るのが大変で…。着替えて三脚を立てて、自撮りタイマーで撮影しています(笑)。採寸して登録するのも大変。でも、サイズ情報は大事なので必ず入れています。自分もよく見るし、メンズの人が『自分も着れるかな』って迷ってくれる時があって、そういう時は数字があるとわかりやすいので。
また、初手となるコンセプトづくりは大変でした。ふわふわしたやりたいことを、言葉にすること。数年かかりました。何がやりたいんだっけ?ニーズはあるんだっけ?ということもぐるぐるしました。」
自分や受け取ってくれる人に合ってる方へと、日々アップデート。
eimiさんにとって一番プライオリティの高いことは何でしょうか?
「自分の思ったことや感じたことを吐き出すこと、自分の価値観を言語化すること。ネガティブだろうがポジティブだろうが書き出して、そしてそれらを素直に受け入れることを大切にしています。自分自身のことがわかって自立しているからこそ、人を助けられることにもつながるし。」
これまでの反省点はあるかと尋ねてみると、こんな答えが返って来ました。
「もっと早く行動してればよかったな、ということですかね。喉元過ぎれば…じゃ無いけど、意外とできるなという感覚がありました。はじめは唯一無二の古着の魅力を押し出そうとしていたけれど、長く着るというコンセプトの方が合って来て、そのコンセプトにいいねと声を掛けていただくこともありました。
この方向が受け入れられるとか、自分に合っているとかは、これからもブラッシュアップするつもりです。コンセプトをわかりやすくすることもしたい。反省というよりはいい試行錯誤です。行動しながら、日々アップデートしていきたいです。」

廃れないデザインを楽しむ感覚を広げていきたい
これからの夢についても話してくれました。
「路面店でポップアップができるくらい大きなブランドにしたいという夢があります。そこへ向かっていく感覚は楽しいです。ポップアップは、人と出会えることも楽しみの一つです。お客さんの話も深ぼって聞いてみたい。どういう方が共感してくれてるのか、どういう考えでどういう生活をしてる人なのか、純粋に興味がありますね。
そしてポップアップを通して、廃れないデザインを楽しむ感覚を多くの人に広げたい。流行よりも、そういう感覚が世の中に浸透していったら嬉しいです。」

OWN
🌍 https://www.own-tokyo.com/
👗 https://www.instagram.com/own.tokyo/
インタビュー・編集・写真 : Manami
🖋 編集後記
人をうらやましく思うこともあるけれど、それが強くなりすぎて自分にあるものを見なくなってしまうのはとてももったいないと感じるので、OWN = 自分が授かったもの を活かしながら生きれたらいいなと思う。自分に対しても他者に対しても、その人が持つ魅力を感じられるようになったら、世界をより豊かに楽しむことができるんじゃないかと、インタビューを振り返りながら思います。
また、環境問題へのアクションは、あれはだめ、これもだめ、と感じてしんどくなる時もありますが、自分自身を生きることと、自分勝手に生きることは違うと思うから、OWNが「作りすぎない」というやり方を見つけたように、わたしも周囲との調和をはかりながら自分自身を生きる方法を見つけていきたいです。